パフォーミングアーツ
迷ったら、ワクワクする方へ。選んだ道を正解にするのは、自分次第だから。
大和田仁美
- 職業:
- 声優
- 所属:
- 青二プロダクション
最近の活動内容について
大和田さんはアニメの声優としてはもちろん、ゲーム、洋画の吹き替え、テレビのナレーション、ラジオのパーソナリティと幅広く活躍されていますが、最近力を入れている活動はありますか?
今は目の前の仕事に全力投球しています! 基本的に来た仕事に対応することが多いので、求められる役に応じてその都度力を入れています。『ウマ娘 プリティダービー』(スマートファルコン役)は、長く続いている仕事のひとつで、ライブや歌手イベントに参加することも多いです。
『ウマ娘』はゲームのみならず、アニメ、コミック、動画配信など、クロスメディアコンテンツとして一大旋風を巻き起こしましたが、大和田さん自身も盛り上がりを感じますか?
そうですね。『ウマ娘』がきっかけで知ってくださった方も多いです。その中のひとりのキャラクターを演じたことで、自分自身の表現の幅が広がったと思います。
印象に残った作品について
これまでに関わった作品の中で、印象に残っている作品があれば教えてください。
『ゼノブレイド2』というゲームタイトルです。
この作品では、本収録の前にゲームを作る上で使う音声素材をプレスコ収録(音声を先に録り、映像を後からつけること)しました。
少人数で複数のキャラを掛け持ちで演じながら、物語の最後までテスト収録したのですが、大きなストーリーをみんなで作り上げていく過程がすごく楽しかったです。
業界に入り、「芝居とは何か」悩んだりしましたが、芝居への向き合い方や楽しさを自分なりにつかめた感覚がありました。
本収録でもニア役をやらせていただけることになりとても嬉しくて、思い入れの強い作品になりました。
声優に興味を持ったきっかけは、アニメやゲームから
大和田さんが初めて「声優」という仕事を意識したのはいつ頃でしたか?
子どもの頃からアニメやゲームが好きで、自然と役を演じる声優さんに興味を持つようになりました。ですが、その時は声優という仕事を意識しただけで、あくまでアニメ・ゲームは趣味として楽しむもの。それよりも、中学・高校と続けてきた音楽の道に進むために、日本大学芸術学部音楽学科に入学しました。
大和田さんは、大学卒業後にヒューマンアカデミー・パフォーミングアーツカレッジに入学していますよね。進路を変えたのは何かきっかけがあったのでしょうか?
大学卒業後も音楽関係の道に進もうとしていましたが、就職活動のタイミングで東日本大震災が発生して、企業の選考がストップ。そこで、これまでの自分を見つめ直すようになりました。それまで音楽しかやってこなかった私は、ほかのことなんかできないと決めつけていたのですが、演劇学科・演技コースで学ぶ学生とふれ合うなかで、「芝居なんて自分には無理と思っていただけど、決めつけなくていい。むしろ挑戦してみたい」と思う自分に出会ったのです。そこで、子どもの頃にアニメやゲームに影響を受けたことを思い出して、声を使って演技する声優の道に進もうと決心しました。
音楽の道から声優の道に進路を変更したことで、ご両親からは何か言われましたか?
両親からは「自分のやりたいことをやりなさい」と背中を押してもらいました。ただ、声優になりたいからと言って、就職しないというのはあまりにも......と思って、一旦は就職することに。働きながら学べる学校を探していたところ、ヒューマンアカデミーに出会いました。
ヒューマンアカデミーを選んだ理由は、オーディション実績
声優を目指すにあたって、いろんな学校を検討されたと思いますが、ヒューマンアカデミーのオープンキャンパスには参加しましたか?
参加しました。体験授業で印象に残ったのは、スタッフの熱量。どこの学校に進学するか迷っていた私に対して「3日で決めなさい」という言葉は強烈でした。ここまできたら迷っている時間がもったいない。行動しようと思った時に進まないと時間だけが過ぎていくと考えて、ヒューマンアカデミーへの入学を決意しました。
ヒューマンアカデミーのどういったところに魅力を感じましたか?
やっぱり、業界プロダクションとの太いパイプと、年間400回以上のオーディション実績です。声優事務所に関する知識がまったくなかったので、いろんなプロダクションのオーディションに参加できるのは魅力的でした。ひと言で「プロダクション」といっても、声優系プロダクションや俳優・タレント系プロダクション、ナレーション系プロダクションなど、さまざまなプロダクションがあります。自分がどこの事務所に合っているかわからなかったので、自分を必要としてくれる事務所に出会えるチャンスが多いと感じたのが入学の決め手です。
今に活きている、「ゼロになれ」という言葉
ヒューマンアカデミーではどういったことを学びましたか?
ボイストレーニングやアフレコの授業、ナレーションの授業もあったので、声優として演じるための基礎を学ぶことができました。また、普段声優はどのようなトレーニングをしているのかなど、声優になった後の心構えまで指導してくださるのが心強かったです。授業では少しでもうまく見せよう、いい声を出そうとする私に対して、先生は「ゼロになれ」と厳しく指導してくださいました。今になって考えると、「こうしなければならない」という余計な感情があると、芝居が縮こまりますし、何より芝居がつまらないものになってしまうからだと思います。準備してきたものを一度捨てて、ゼロになって演じた時にこそ、思ってもみない音や芝居が出てくるもの。先生から言われた言葉は、声優になった今も大切にしています。
在学中はどのような学園生活を送っていましたか?
本当に人に恵まれた学園生活だったと思います。仕事と勉強の両立は大変でしたが、常にスタッフの誰かが手を差し伸べてくれて、孤独を感じたことは一度もありませんでした。信じられる存在がいたからこそ、夢に向かって頑張ることができたと思います。また、年齢や価値観もさまざまな学生に囲まれて学ぶ毎日はとても刺激的でした。
オーディションに参加して青二プロダクションに所属が決定
大和田さんは在学中に行なわれたオーディションに参加して、青二プロダクションの所属となりましたが、事務所所属までの流れについて教えてください。
青二プロダクションのオーディションが開催されることは知っていたのですが、ちょうどその時に仕事が立て込んでいたのもあって、オーディション参加をあきらめていました。エントリーシートの提出期限が迫るなか、私がエントリーしていないことに気づいた先生から「今日中なら間に合う」と声をかけてくださり、それでスイッチが入りましたね。急いでボイスサンプルを録りにいってエントリーシートを提出しました。先生のひと言がなかったら......と考えると、青二プロダクションに所属できなかったかもしれません。先生には感謝しています。
オーディションを受ける後輩にアドバイスをいただきたいです!
学生のどこを見て採用しているかは、プロダクションによって異なると思いますが、オーディションで取り繕っても見透かされると思います。もちろん芝居や発声など、準備することは大切ですが、かっこいい声を出す、かわいい声を出そうとするのではなく、自分自身の素直な声を出すことが大切です。素直な声を出すことで、「この声だったらこういう仕事の表現で使えるかもしれない」とプロダクションの方で可能性を見出してくれたりすることもよくあります。「私はこうです」と自分で決めつけずに、その時に出せる自分らしい声と芝居、技術をアピールした方が良いと思います。
アニメ・ゲーム制作の作り手とともに、ひとつの作品を作り上げるやりがい
実際に憧れの声優になって、どういったところにやりがいを感じますか?
ほかの声優さんとの掛け合いのなかで、思ってもみなかった声や芝居が出せた瞬間はすごくやりがいを感じます。また、制作の皆さんとともに、ひとつの作品を作り上げられるのもやりがいですね。アニメにしてもゲームにしても、ストーリーがあって、キャラクターがあって、皆さんが一生懸命作り上げてきた作品に対して、最後に声を当てるのが私たち声優の役割。あくまでアニメの主役は絵で、本当にたくさんの方の努力や想いが詰まっています。関わる人がたくさんいるなかで、一つのピースとして関わり、いい声や芝居が出せた時は私も仲間の一員になれたと実感します。
声優の「役割」の話が出ましたが、アニメ作品のイベントでは声優がスタージに立って、歌やダンスのパフォーマンスをすることも珍しくありません。以前よりも活躍のフィールドが広がることで、より多くの方に注目されるようになったこともやりがいだったりしますか?
まさかこんなに歌って踊るとは思っていなくて(笑)。でも、そういう場面でしか感じられない達成感はありますね。例えば『ウマ娘』のライブでは、キャラクターに扮して歌ったり踊ったりしますが、私が演じているのはライブが好きで、センターで歌い、踊ることを夢見ているキャラクターです。ステージでキラキラ輝くことが何よりうれしくて、夢に向かってまっすぐ生きているキャラクターとしてステージに立つことで、キャラクターが見ているものや感じていることを自分の体験としてとらえられるようになりました。リアルなイベントを通して、キャラクターの違った一面を発見できる場面も多く、とてもやりがいがあります。
声優になってからが本当のスタート。チャレンジし続けることが大切
反対に、声優になって大変・難しいと感じることは?
たくさんありますね。特に声優という仕事はひとりではできないので、どうしても「待ち(受け)」になってしまう部分はあると思います。オーディションに受かる確率は本当に低く、枠も決まっているので、そういう意味ではとても競争が激しい世界だと思います。自分で仕事を生み出すことが難しいので、メンタル的に"もどかしさ"がつきものです。でも、そこで負けずに気持ちを保ち続ける人が残っていくとも思います。転がってきたチャンスをいかにつかむかという瞬発力も必要になるでしょう。
声優になるまでも大変だし、声優になってからも大変な業界ですね。
事務所に所属したからといって、必ずしも仕事があるわけではないですし、所属してからが本当の意味でのスタート。声優になってからもチャレンジし続けることが大切ですね。
体験したことのすべてが芝居や声色につながっていく
高校生のなかには声優を目指す人も多いものです。どのような体験を積めばよいでしょうか? アドバイスできることはありますか?
そうですね。体験できることはなんでも体験した方がいいと思います。たとえそれが「遊び」だとしても、その時にしか得られない感情もあるはずです。たとえば「声優になりたいけど、部活はやり遂げたい」という人も多いと思いますが、部活をやりきったことで得られる達成感はその時にしか感じられないもの。経験したことのすべてが芝居や声色につながっていくと思うので、何事もムダだと思わずに、心を動かす体験を積んでほしいです。
声優という職業にとらわれずに、生の芝居に挑戦してみたい
今後の夢やチャレンジしたいことはありますか?
チャレンジしたいことはたくさんありますが、生の芝居に挑戦してみたいと思っています。声優ひとりではできないことも、ほかの声優さんと一緒に活動することで、できることも増えてくるはず。いろんな方と関わり合いながら、新しい作品やエンタメにも挑戦したいです。声優という仕事は「待ち」が多いとお話ししましたが、声優をやりながらYouTuberとして活動している方も増えています。これまで築いてきたキャリアや経験をもとに、声優という職業にとらわれずにチャレンジしたいと考えています。
捨てきれない夢があるなら、ゼロになって飛び込んでほしい
最後に、この業界を目指す方や声優を目指す方へメッセージをいただけますか?
声優を目指す方のなかには、「この道に進んでいいのかな」「どの学校に行こうかな」と悩んでいる人も多いと思います。私が何かを選択するときに大事にしているのは、わからない方に進むということ。想像できる方へ行くと、やっぱり新鮮味もないですし、刺激も少ないので、だんだん楽しくなくなってしまうんですよね。選んだ道が不正解のように見えたとしても、自分次第で正解に変えることもできるはずです。もちろん私自身も怖くなったり、迷ったりする時もありますが、どうなるかわからない方へ飛び込むことを意識しています。
声優を目指す方のなかには、失敗をおそれている人や不安を抱えている人もいると思いますが、先の見えない道の先にあるのは、怖いものだけではありません。自分がワクワクできたり、自分が強くなれたり、自分自身がもっと好きになれたりするものもあるはずです。もし捨てきれない夢があるなら、ゼロになって飛び込んでほしいです。一歩進んでしまえば、もう進むしかありません。その踏み出した一歩が、あなた自身の扉を開くきっかけになることを願っています。
大和田仁美
- 職業:
- 声優
- 所属:
- 青二プロダクション
3月23日生まれ、神奈川県出身。出演作品は、アニメ『はねバド!』(羽咲綾乃)、アニメ『アリスと蔵六』(樫村紗名)、ゲーム『Fate/Grand Order』(アビゲイル・ウィリアムズ)など。